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【風呂】

 入浴。ヒト属憩いのひと時である。日々の疲れも、熱い湯船につかって一息つけば、いくばくかでも楽になろうというものだ。温泉、とまではいかずとも、自宅のこぢんまりとした浴槽でも十分だ。夏場の汗ばんだ体を洗い流し、エアコンの冷風で意外に冷えた体を温める。至福である。

 都会ではそうもいかないが、山間の田舎なら浴槽の戸を全開にしてみるのも一興である。外からの音、たとえば梅雨時からは幾分も落ち着いてきた蛙の鳴き声が聞こえてきたりもするだろう。贅沢にも夕方頃から入浴すれば、ヒグラシの声も聞こえるだろう。ちょっとした露天風呂気分である。

 そのような楽園にさえふみぞうどもは忍び寄る。通常のふみぞうは風呂場の湿気に耐え切れず腐って死ぬが、黒い胞子のふみぞうや、赤い菌糸を持つ特殊なふみぞうであれば、この高湿な環境内でも生きることができる。無精者の家であればめったにカビキラーを食らうこともない、楽園である。

 しかし青天の霹靂! 飛散したボディソープの泡を食らい、たちどころに絶命する黒いふみぞう! 一般的な黒カビであれば屁でもない泡だが、ふみぞうは弱い菌である! 環境に適応したとて、突然の攻撃には耐えられるはずもないのだ! かくして人知れずふみぞうは滅ぶ。油断大敵である!
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【土用の丑の日】

 土用の丑の日である。ヒト属はこの日、鰻を食する。なんでも過去に、ある偉人がこの日に鰻を食すと良いと助言をしたことが始まりなのだそうだ。そのような経緯はともかく、この日街はタレの焼ける香ばしい匂いに包まれる。酷暑の空に漂うその香りだけでも、精もつきそうなものである。

 元々は「うし」の日になぞらえ、「う」のつく食べ物を食する日であったのだと言う。鰻を食するのはいわゆる商戦の一環で生み出されたものなので、別段鰻以外でも構わない。うどんでもいいし、それこそ丑の日なのだから牛を食べてもいい。選択肢は、存外多量に存在しているものなのだ。

 さて、台所の隅っこでふみぞうどもが恐怖に震えていた……この駄菌もまた名に「う」を持つのだ! しかしなんという傲慢か! 確かにその名だけ見れば食されると危惧するのであろうが、ふみぞうは菌類である! 食せば腹を下すことは必至……ふみぞうが食卓に並ぶことなどありえない!

 しかし、そんなふみぞうにヒト属の手が伸びる……否、その手は隣の納豆を取っていく。その拍子にふみぞうを発見!「ふみぞうだ!」布巾で除去される苗床! ふみぞうは従属栄養生物である。苗床を喪えば滅菌(し)あるのみ! 酷暑の中、精を奪われ干からびて死んでいく運命なのである!

【七夕】

 7月7日、七夕。彦星と織姫とが年に一度の逢瀬を楽しむという日だ。過去の人々にもちろん通信機器などないから、気軽にメールのやり取りをすることもできなかったであろう。一年は短いようでやはり長いものだ。下世話だがそんな間柄の相手よりも、別に誰ができてしまいそうなものだが。

 そのような日に、地上では笹の葉に短冊をつるす。幼少の折から願い事……あの職業につきたい、ヒーローになりたい、など……を、色とりどりの短冊に書いてはつるしていくのだ。商店街に、幼稚園児たちの無邪気な願い事をつるした笹が、いくつも並べられている。この時期の風物詩である。

 ふみぞうどもにそのような習慣はない。菌どもは知っている。願うだけではかなうことはない。己の手で運命を切り開くことが重要なのだと。菌どもの願いと言えば、しょせん食パンに繁茂したいだとか、チーズを青く染めたいだとかその程度であるが、これもやはり己で行わねばならぬことだ。

 しかし……無惨! その願いは成就したと同時、ヒト属に発見された! 「こんなところにふみぞうが!」廃棄される食パン、容赦なく噴霧されるカビキラー! 菌糸は砕け散り胞子は舞い飛ぶ。まるで笹の葉に揺れる短冊のごとく、胞子は宙を舞うのである。再び繁茂するその瞬間を夢見て。
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本州の端っこに震えながら生息する菌類・ふみのブログです。
趣味についてのあれこれを、徒然なるままに語っていきますので、緑茶でも飲みながらまったりとご覧ください。

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